都会の小さなジャズバーの片隅、煙草の煙が燻る真夜中。
手元に残されたのは、別れたあの人が置き忘れていった、なんてことのない使い古しのライター。
頭では終わりの理由を理解していながらも捨てられず、冷たい静寂の中で、固い石を指先でカチッと弾いてしまう。
一瞬だけ弾ける火花を見るたびに、もう消えたはずのあの人の温もりや、優しすぎた言葉が、ウッドベースの重い低音とともに生々しくよみがえる。
紗也華が歌う最新作『残った火種』は、割り切ることのできない人間の愛おしい「執着」と「未練の温度」を、極上のスモールバンド・ジャズ(Blue Note)に乗せて描き出した、最高に内省的でメランコリックなブルースです。
【紗也華の告白】
捨ててしまえば楽になれるのに、指先が勝手にあの人の気配を探してしまう。
そんな、心の中にどうしても残ってしまう『火種』のような割り切れない想いを、ピアノの旋律に合わせて、少し強がりながら、だけど剥き出しの感情のままに歌い上げました。
真夜中、ひとりの時間に、静かに耳を傾けてみてください。